トリアマント - 表面硬化肉盛材(WC溶接棒)
トリアマントは、日立ツール株式会社の表面硬装に関する長年の経験と研究から生まれた表面硬化肉盛材(溶接棒)および表面硬装用粒子からなる製品群で、同社から瑞穂工業が技術委譲を受けたものです。耐摩耗性、耐衝撃性、溶接性といった同時に持たせるのが難しい特性を高い水準で兼ね備えており、厳しい条件の下で使用される機械部品、掘さく用工具などの硬装に最適です。製造過程で炭素および不純物含有率を厳密に管理しており、硬度はHvl800〜2200を示します。鉄系および銅系金属とのヌレ性はきわめて良好で、十分な耐摩耗性を有するW2C-WC共晶合金です。
トリアマント粒( Kメタル)
トリアマント粒は、タングステンを特殊な方法で溶融して製造したW2C-WC共晶合金粒子で、緻密で微細な結晶組織を有しており、ダイヤモンドに次いで耐磨耗性の高い硬質粒子です。WC は非常に硬い一方、W2C はある程度の靭性を有し、WC を支持する役割もはたします。
粒子の粗いものは主に石油土木関係に用いられ、優秀な堀さく性を示し絶大な信頼をいただいております。一方耐摩耗性に重点を置く用途には、粒子径の細かいものが適しています。
トリアマントガス溶接棒
きわめて高い硬度を有するトリアマントを、溶接性をよくするフラックスとともにパイプに封入したもので、径は3.5mmと5mm、長さ400mmと800mmが標準となっています。堀さく用には粒子の粗いKG-5を、耐摩耗用には粒子が細かいKG-3S、KG-5SおよびKG-3をご利用ください。
トリアマント電気溶接棒
堀鑿(くっさく)を行わない、耐摩耗性を重視すべき用途には、電気溶接の方が効率がよい場合があります。ガス溶接の方がクラックは起こりにくいのですが、広い面積を硬装する場合は電気溶接棒をおすすめします。電気溶接用にフラックス加工による皮膜を加えてあります。
トリアマント表面硬化肉盛材一覧表
区分 | 製品番号 | 用途 | 粒度(メッシュ) | 主成分 | かたさ(HV) |
トリアマント粒 | K-25 | 掘さく用 | 20〜30 | W2C-WC | 粒子 1800〜2200 |
K-80 | マトリックス硬化用 | 50〜100 | |||
K-150 | 100〜200 | ||||
K-250 | 200〜325 | ||||
K-400 | 325以下 | ||||
トリアマント ガス溶接棒 |
KG-3 | 先端部肉盛硬装用 | 30〜100 | W2C-WC-Fe | 粒子 1800〜2200 地鉄 600〜1000 (HRC55〜69) |
KG-5 | 平面部肉盛硬装用 | 20〜50 | |||
KG-3S | 耐摩耗肉盛硬装用 | -50 | |||
KG-5S | -50 | ||||
トリアマント 電気溶接棒 |
KE-3 | 耐摩耗肉盛硬装用 | 30〜100 | W2C-WC-Fe | 粒子 1800〜2200 地鉄 900〜1050 (HRC67〜70) |
KE-5 | 20〜50 | ||||
ME-3S | 耐磨耗用 (硬装作業能率重視) |
-40 | 粒子 1000〜2000 地鉄 550〜600 (HRC52〜55) |
||
ノコチューブ ガス溶接棒 |
MG-3S | 耐摩耗肉盛硬装用 | -40 | W2C-WC-Fe | 粒子 1600〜2000 地鉄 600〜700 (HRC55〜60) |
MG-5S | -40 | ||||
タングステン ガス溶接棒 |
SG-3F | 耐摩耗用(耐衝撃) | -40 | WC-Co-Fe | 粒子 1000〜1500 地鉄 300〜600 (HRC30〜55) |
SG-5F | 12〜100 |
トリアマントによる溶接法
(1)アセチレンガス溶接法
要領 | 理由 | |
I | 溶接設計1.隅部は2R程度つけて下さい。 2.溶接肉厚は最大8mm三層に止めて下さい。 3.高Mn鋼に硬装する場合は、ステンレスを下盛して下さい。 |
1.亀裂の防止 2.耐衝撃性確保および亀裂の防止 3.溶着不十分により剥離してしまうのを防ぐ |
II | 母材の状態1.サンドブラスト、エアーグラインダー、ワイヤブラシ等で油、ゴミ、スケールをきれいにとりのぞいてください。 2.予熱炉またはバーナでできるだけ広い面を加熱して下さい。 |
1.スケール、サビ等は、ノロの量を多くし、気泡の原因になります。 2.冷却時に亀裂を生じたり、台金との溶接不十分で剥離の原因となったりします。 |
III | 火炎の調節ガス過剰炎(還元炎)を使用して下さい。(酸素圧弱く) |
溶接面が完全に炎で覆われることで中のトリアマントの酸化を防ぎ性能が出ます。逆に外側の酸化炎の部分を使うとトリアマントが酸化するし、酸素圧が大きいとトリアマントが飛び散り、溶接層の中にトリアマントが残りにくくなったりします。KG-3、 KG-5S等の細粒の場合は、さらに炎を長めにします。 炎の構造 - Wikipedia |
IV | 溶接開始時期母材の表面が汗力キ状態になってから溶け始めないうちに溶接を行います。 |
汗カキ状態に達しないうちに溶接すると溶着不十分となり、反対に溶かしすぎると硬質粒が沈降し、性能が落ちます。 |
V | トリアマント棒のとかし方バーナで溶接棒をとかして汗力キ状態の母材に押し込むように置いていき、溶湯をあまり流さないようにします。 |
溶湯の流れが大きいとトリアマントが溶着層の底部に沈み、トリアマントの均一分布が得られません。 |
VI | 溶接後の処置原則として徐冷することが必要です。研削する場合にはGC砥石を使用して下さい。 |
徐冷すると亀裂が発生しにくくなります。高価な溶接棒ですし研削するのは不経済ですので、なるべく研削しないですむようにしたいものです。 |
(2)電気溶接法
I できるだけ均一に予熱を行ない、亀裂を防止し て下さい。
II 適正電流を使用して下さい。
製品番号 | 溶接電流 |
KE-3 | 80〜100A |
KE-5 | 890〜120A |
III アークを短く、ウィーピングを避けてストレートにゆっくり溶接して下さい。
IV 交流・直流いずれでも使用できます。
トリアマント粒の用途
分野 | 用途 | トリアマント粒度区分 |
石油掘削 |
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K-25 |
土木・石工 |
|
K-25 |
工作機械 | バリ取砥石(溶断面〜鋳物バリ) | K-25 |
黒鉛・ゴム類用砥石 | K-25〜K-80 | |
鋼材切断刃 | K-25 | |
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K-25〜K-80 | |
研磨粒・研麿粉 | K-80〜K-400 | |
|
K-25 | |
プラズマ溶射 | 表面硬装 | K-150〜K-400 |
ダイヤモンド工具 |
|
K-80〜K-400 |
トリアマント溶接棒の用途
分野 | 用途 | トリアマント粒度区分 |
石油掘削 |
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KG-3 KG-5 |
鉱山・炭鉱 | ドリリングビット | KG-5 |
ビットゲージ部硬装 | KG-3 | |
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KG-3〜KG-5 | |
土木・建設 | アースドリル(リバース刃先等) | KG-5 |
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MG-3S,MG-5S KG-3S,KG-5S KE-3,KE-5 |
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鋳物工業 |
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KG-3S,KG-5S KE-3,KE-5 |
ショットブラストのブレード | KG-3S,KG-5S | |
窯業・セメント |
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KG-3S,KG-5S |
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KE-3,KE-5S | |
港湾・農業 |
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KG-5,KG-5S |